羊毛の特徴

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羊毛の特徴

この記事では、羊毛の構造や機能、年齢や部位による違いなどについて、まとめました。

1.羊毛の種類・構造
羊には、性質の異なる3種類の毛が生えています。

羊毛の種類 特徴
ヘアー 太く真っすぐな毛。
ウールとケンプの中間くらいの太さ。
断続的な髄質がある。
ウール 柔らかく、細い毛。
髄質がない。
太さは15~40μで、髄質がない。
ケンプ 固く太く、毛内部の髄質が中空になっている。
太さは70μ以上。

※μ(マイクロン)=1/1,000 mm

<羊毛の構造>

二重構造・・・毛はフォリクルと呼ばれる毛根から生えており、ヘアーを取り囲むようにウールの細い毛が密生した二重構造になっています。

スケール・・・うろこ状で薄いキューティクルで覆われた表皮部分。空気中の湿気や酸、アルカリの状態よってうろこ部分が開閉する仕組みになっています。

クリンプ・・・スケールの下にあるコルテックスという2種類の酸性と塩基性に反応するタンパク質により、クリンプというウェーブがかった状態になっています。これにより毛に弾力が与えられます。

皮膚と同じ成分・・・羊毛はもともとは皮膚が変形した組織のため、皮膚と同じタンパク質で出来ています。

2.羊毛の機能
・耐寒性
縮れた毛(クリンプ)の間に大量の空気を含むので、保温力がある。マイナス60℃でも凍らない。断熱材としても利用されています。

吸湿性
スケールの働きで、湿度を吸収できる。保温性があり、汗も吸収するので汗冷えしない衣服を作ることができます。

難燃性
湿分を蓄えられるため熱伝導が低く、600℃近くにならないと発火しません。消防士の制服、飛行機のシートやカーペットにも使われいています。

消臭機能
細胞の集合体のため、臭いの元を吸収できる面積が多いのが羊毛の特徴です。シックハウス症候群の元となるアルムホルデヒドや二酸化硫黄などを吸収する働きがあることも報告されています。

防汚性
表面にあるキューティクルにより、水や汚れを弾く働きがあります。

フェルト化
水分と摩擦が起こると繊維が絡み合い、フェルト化現象が起こります。この現象を利用して作品を作ることができます。

 

羊毛は生えている場所や、年齢・性別などによっても、特徴が現れます。

3.部位による違い
羊毛は主に、次の図のような部位に分けられます。

部位 特徴
ショルダー 最も良質な毛
サイド ショルダーよりも毛足が長く、色ツヤが劣る
バッグ 雨風にさらされやすい部位、毛先は脂が取れやすく、やや乾燥している
ブリッジ 太く、ヘアーやケンプを含むことがある
※ヘアー・ケンプの説明はこちら 羊毛の特徴①構造と機能

羊1頭分の羊毛が1枚に広げらるように毛刈りし、汚れた部分を取り除く「スカーティング」という作業をすると次の図のように、羊毛を広げることができます。
※毛刈り後の毛のことを「フリース」と呼びます。

4.年齢・性別による違い

呼称 特徴
ラム(Lamb) 生後3~6か月。短く柔らかい毛。ミルキーティップという硬く、カールした毛先が見られる。
ショーンホゲット 生後12~15か月。ラム(Lamb)の時期に1度毛刈りしていて、2度目の毛刈りになる羊。毛長は短いが、ミルキーティップがなく良質な毛。
ウーリーホゲット 生後12~15か月。生まれてから初めて毛刈りする羊。毛長が長く、ちぎれやすい。また、ミルキーティップがある。
ユー ホゲット以降のメス。妊娠期後期、泌乳期は毛が切れやすい。子羊が親離れして8~10週すると、元の毛の状態に戻る。
ラム(Ram) 交配用のオス。特有の臭気があるため、他個体の毛とは別に取り扱う。
ウェザー 1~3週間目で去勢したオス。メスよりも毛量が多く、また弾力もあり、ラム(Ram)のような臭いもないが、柔らかさはユーの方がある。

毛刈りは5~6歳頃まで行われます。それ以上の年齢だと、ケンプが混じった硬く、太い毛になってしまいます。

5.品種による違い
その他に、羊毛の違いを判断する基準として
・毛の太さ
・毛の長さ
・毛を引っ張った時の強度
・弾力性
・ツヤ
・脂量(脂は毛穴から分泌され、羊毛に付着するラノリンと呼ばれるもの)
・フェルト化による縮み率

などがあり、これらは羊の品種によって傾向がみられます。

 

【参考資料】
「羊の本」著:本出ますみ 出版:スピナッツ出版 2018年
「羊飼いの暮らし」著:ジェイムズ・リーバンクス 訳:濱野大道 出版:早川書房 2018年(文庫本版)

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